PARADE
Lincoln Centre Theatre at The vivian Beaumont


『パレード』
作詞・作曲/ジェイソン・ロバート・ブラウン
演出/ハロルド・プリンス

 最近破産宣言をしたりとトラブル続きのライベント社(『ラグタイム』や 『蜘蛛女のキス』など)の新作が『パレード』。 1913年のアトランタを舞台にしたノン・フィクションで、真面目で閉鎖的な ユダヤ人のレオ・フランクが自分の工場で働いている少女の殺人事件で告発される。 不公平な裁判で有罪になり死刑判決を受けるが、彼の妻ルシールの働きで終身刑に減刑される。 そして獄中生活の中で優しさを持つようになるが、 被害者の婚約者らにリンチされ殺される。  結局誰が少女を殺したかは実際に解っておらず、 作品の中でも誰が犯人なのか結論は出さない。 ただし作品全体はレオ・フランクに好意的に創られていると言える。

 脚本は『ドライビング・ミス・デイジー』などのアルフレッド・ウーリー。 演出はハロルド・プリンス。 一、二幕通して非常に重く暗い作品。 登場人物が多すぎてキャラクターを覚えるのに一苦労する。 新人のジェイソン・ロバート・ブラウンによる音楽は、心に残るような メロディーのある曲はほとんどない。 しかしとても好感が持てた。 物語の年代が同じだということもあるが、『ラグタイム』や『タイタニック』 のような音楽があったりする。 どことなく『カンパニー』などのスティーブン・ソンドハイム独特の 作曲スタイルに近つ゛けようとしたようにも思えた。 レオ・フランクの妻が一幕で歌う "You Don't Know This Man" は オードラ・マクドナルドが最近出したアルバムの中で歌っていたのを 聞いたせいか、印象に残ったナンバーだ。   物語の進み具合は非常に遅い。 一幕のフィナーレとなる裁判のシーンが延々と40分近く続き、 一幕最後で彼の有罪が決まる。 二幕は一幕と比べればまずまずの出来といえる。 前にも述べたが、マイナーな登場人物が多すぎて主人公であるはずの フランク夫妻について余り語られないまま舞台が終わってしまう。  

 リチャード・ヘルナンデスによる装置は半透明の幕を効果的に使っていた。 例えば劇中何度か行われるパレードのシーンでは、半透明の幕を 挟んでその後ろをパレードの行列が上手から下手へ次々と流れていき、 幕の前ではパレードの観客達が手を振っていて 上手く遠近感を出していた。 ただ客席に着いた時から目に入る巨大な木の装置が一見重要そうに見えて、 劇中特に重要な役割を果たさず、一場面でしか使われなかった事に 疑問をおぼえた。  

 キャストはレオ・フランク役のブレント・カーバー(『蜘蛛女のキス』 でトニー賞を受賞)が素晴しい。 真面目でどことなく怪しげなこの役を器用に演じた。 ルシール・フランク役のキャロリー・カーメロも夫レオを直向きに愛する妻を好演。

 音楽、美術、キャストの面では完成度の高い作品といえる。 ただ、脚本が複雑だという事もあるが、ハロルドプリンスの演出が余りにも スローで奥が深すぎて作品の全体像を掴めないのが一番の問題であるように思う。 

 

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