FOOTLOOSE
Richard Rodgers Theatre
『フットルース』
作詞・作曲/ディーン・ピッチフォード、トム・スノウ
演出/ウォルター・ボビー今シーズン最初の新作ミュージカルが1982年の映画を舞台化した 『フットルース』。ダンス好きの高校生のレンが母親とともにシカゴ から田舎町に引っ越すが、その町は閉鎖的でダンスもロックも禁止されていた。 レンが町に活気を戻そうと若者の自由を取り戻していく。 70〜80年代のポップ・ミュージックを使ったダンス・ミュージカル。 映画がヒットした事もありこの作品について知っている人は 多いのではないだろうか。
9月にワシントンでトライアウト公演を行ったのだが、そこでの批評は 散々たるものでブロードウェイでの開幕も危ぶまれたが、何とか開幕に漕ぎ着けた。 ワシントンでのプレビュー公演以来大幅に手直しを加えたようだが、作品の出来は今一つ。 このミュージカルのメインといえるダンスはアクロバティックで非常に難しい 振り付けであった。 一幕終りに学校のジムで繰り広げられるダンス・ナンバー "On Any Sunday" ではバスケットをしたり、ロープに宙吊りになったりと特に激しく、ダンサー達の 体力に感心させられた。
ステージングの所々で数年前に上演された駄作『キャリー』を思い起こさせる。 『キャリー』もハイスクールを舞台にしたミュージカルだった。 衣装や装置はカラフルだが全体的にシンプルであった。 装置では二幕に舞台の上から降りてくる巨大な橋のセットが目玉のようだが、 5分たらずの登場なので勿体ないように思えた。 キャストは全員素晴しいが特にレンの母親を演じたベテラン、キャサリン・コックス が流石の出来だ。
劇場の壁をショッキング・グリーンに塗変えたりと色々な意味で近年ヒットした リバイバルの『グリース』を意識したようだ(『グリース』の場合は ショッキング・ピンクに劇場を塗変えていた)。 演出のウォルター・ボビーが 『グリース』のオリジナル・キャストの一人であったからかもしれない。 確かにどちらもハイスクールを舞台にした青春ラブ・コメディーという意味では 共通点は多い。 しかしグリースは60年代を舞台にしており、ノスタルジックな感慨で作品を観る事 ができる。 『フットルース』の設定はプレイ・ビル(プログラム)によると現代より 少し前ということなので、前者のようにノスタルジックな作品とは言えず、 ただのハイスクールを舞台にしたダンス・ミュージカルでしかない。 とてもパワフルな作品なのだが、今一つ物足りなかった。